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注射で治す、腰椎椎間板ヘルニア!! 『椎間板内酵素注入療法』とは?
この度は、成尾整形外科病院内のホームページでブログを開設させていただくことになりました。
整形外科での診断や治療、最新の学会での報告などを説明し、病気、けがなどの理解を深める場所になっていただけたら、うれしいです。
さっそく第1回ですが、椎間板内酵素注入療法をご存じですか?
腰椎椎間板ヘルニアとは?
背骨は椎骨という骨が連なってできてます。椎骨と椎骨の間でクッションの役割をしているのが、椎間板です。椎間板の中央にはゼリー状の髄核があり、周囲のコラーゲン繊維である繊維輪で覆われています。繊維輪に亀裂を生じて、髄核が飛び出します。椎間板外に飛び出した髄核をヘルニアと言います。ヘルニアが近くに走行する神経根、馬尾神経を圧迫することで痛みやしびれなどの症状を呈するのが、椎間板ヘルニアです。
腰椎椎間板ヘルニアの治療方法は?
大きく分けて、保存療法と手術療法があります。
椎間板ヘルニアは縮小、消失することも多く、まずは保存療法から開始します。
保存療法;安静、薬物療法、装具療法、神経ブロックなどがあります。薬物療法は非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)だけでなく、様々な種類の鎮痛剤が開発され、使い分けされております。
手術療法;手術により直接圧迫しているヘルニアを摘出することで神経の圧迫を取り除きます。入院、全身麻酔、切開が必要です。神経痛の強い患者さん、麻痺を呈している場合が適応となります。当院では患者さんへの侵襲を減らすように顕微鏡、内視鏡を用いた低侵襲の手術を行ってます。
椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)
保存療法と手術療法の中間に位置するのが椎間板内酵素注入療法です。
局所麻酔で椎間板内にヘルニコアを注入して治療を行います。
保存療法でもヘルニアの症状が改善しない患者さんが適応となります。
椎間板内酵素注入療法に用いるヘルニコアとは?
ヘルニコアの有効成分コンドリアーゼは、椎間板内の髄核を保水する成分(プロテオグリカン)を分解する酵素です。
髄核内にヘルニコアを注入することで、コンドリアーゼによって髄核内の保水成分が分解されると椎間板内圧が下がり、ヘルニアが縮小することで神経の圧迫が改善し痛み、しびれが軽減されると考えられてます。
すべての腰椎椎間板ヘルニアに適応となるのですか?
椎間板内酵素注入療法の適応となるのは後縦靭帯下脱出型(subligamentous extrusion)が適応となります。
脱出型によるMacnabのヘルニアの分類(Backache.2nd ed,1990.より改変)
どこの病院でも椎間板内酵素注入療法が受けられるのですか?
専門医と専門施設である「医師要件」、「施設要件」を満たした病院でないと施行できません。治療を希望される方は上記を確認してから専門医を受診しましょう。
椎間板内酵素注入療法の実際
局所麻酔で行います。ヘルニコアの効果を十分に発揮するためには、正確な椎間板中央への注入が重要と報告されています。
当院では、Cアーム(外科用レントゲン撮影装置)を用いて、正確に椎間板中央に注入するように心がけてます。Cアームを用いることで、患者さんを動かす必要なく、レントゲンの正面、側面、斜位像を撮影できます。
椎間板中央に刺入し、ヘルニコア1.0mlをゆっくり注入します。
投与後は5-10分経過を診ます。投与後1,2時間安静をしてもらい問題なければ離床を開始します。投与後に一過性に腰痛や下肢痛が増強することがありますので、痛みがあるときは安静を継続します。
投与後1週間程度は腰椎に過度の負担がかけないよう日常生活を過ごしてもらいます。
実際のヘルニコアを注射した症例のMRI画像です。
ヘルニコア注射前にはL5/S椎間で右にヘルニアが突出して神経根を圧迫し、腰痛下肢痛を呈しておりました。注射後1か月、3か月でヘルニアが縮小しているのがわかります。神経症状も改善しました。
腰椎椎間板ヘルニアに対して、新たな治療、椎間板内酵素注入療法が保険適用になりました。腰椎椎間板ヘルニアでお困りの患者さんは一度専門医を受診して相談してみてください。
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